相続した不動産を売却した時の軽減措置

相続税の取得費加算の特例

 相続案件を扱う中で、相続財産の課税価格計算における不動産の価額の占める割合が大きいことが多いのですが、十分な相続対策をしていない場合、相続人は不本意な対応を迫られるケースが見受けられます。なかには財産評価をしてみたところ、相続税の個人負担額が2000万円となったにもかかわらず、相続財産のほとんど全てが不動産で、個人の現預金の相続財産が500万円のみ、相続税を支払うことができない、というケースも現に発生しています。このようなケースでは、相続税を納付するために例え買主から厳しい指値を入れられても、相続開始から10月以内に相続した不動産を売却せざるをえなくなる状況となる可能性があります。
ある程度の財産を保有している方はできるだけ早めに相続対策をすることを強くおすすめしますが、今回は少しマイナーな内容ですが、本意・不本意を問わず相続した財産を短期で売却した場合の譲渡所得税の軽減措置(相続税の取得費加算の特例)についてみていきます。

相続税の取得費加算の特例
 相続した財産を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、その相続人の相続税のうち次の算式によって計算した金額を売却財産の取得費に加算するという趣旨の特例が相続税の取得費加算の特例です。

資産譲渡した者の相続税額×譲渡資産の相続税評価額/その者の相続税の課税価格

 相続税の申告期限は相続発生日(死亡した日)から10ヶ月なので、相続発生日から3年10ヶ月以内に売却した場合に適用される特例となります。
 算式だけではイメージがわかないのでこの特例が無い場合とこの特例が適用される場合を具体的にみてみましょう。

<具体例>
父親の死亡日が平成29年5月10日、相続人は1人、相続財産は空地A(平成15年6月1日父親が取得)と別荘Bのみ、相続税の支払いのために空地Aを平成29年10月6日に以下の条件で売却しました。
<条件>
 売却価額:8000万円
 譲渡費用:500万円
 父親が空地Aを取得した金額:2000万円
 相続税の課税価格:2億円(空地Aが1億円、別荘Bが1億円)
 相続税額:4860万円

①相続税の取得費加算の特例がない場合の譲渡所得税

 譲渡収入=8000万円
 取得費=2000万円(相続財産の場合、被相続人が取得した金額となります)
 譲渡費用=500万円
 長期譲渡所得=譲渡収入(8000万円)-(取得費(2000万円)+譲渡費用(500万円))
       =5500万円
 譲渡所得税=長期譲渡所得(5500万円)×20.315%=11,173,200円(100円未満切捨)

②相続税の取得費加算の適用がある場合の譲渡所得税

譲渡収入=8000万円
取得費=2000万円+※2430万円=4430万円
 ※4860万円×1億円/2億円=2430万円
譲渡費用=500万円
長期譲渡所得=8000万円-(4430万円+500万円)=3070万円
譲渡所得税=3070万円×20.315%=6,236,700円

特例がない場合の税金(①)が約1110万円であるのに対し、特例を適用した場合の税金(②)が約620万円となり、特例を使うことにより約490万円税金負担が少なくなります。  重複しますが、ある程度の財産を保有している方はできるだけ早めに相続対策をしましょう。その上で、不動産価格の波を読んだ積極的な売却時にはこの特例の適用を考えてみてもいいのではないでしょうか。

執筆者:関口達也

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