後見人- 認知症などにより判断能力がなくなってしまうと -

成年後見制度とは

現在、65歳以上の4人に1人が認知症又はその予備軍と言われているようです。
認知症には様々な症状がありますが、例えば、財布や通帳を失くす、日常の買い物でお金の計算ができなくなるなど、自ら財産管理をすることが困難になることがあります。
また、認知症により本人の判断能力が不十分になったことに乗じて、近親者が本人の財産を私的に流用するということも少なくありません。
このように判断能力が不十分になった方々の権利や財産を守るための制度が成年後見制度です。
例えば、後見人・保佐人・補助人などの第三者が本人に代わって財産を管理することにより、本人が自ら管理することによる財産散逸の危険を防止したり、近親者が本人の財産を私的に流用する危険を防止したりします。

成年後見制度は、判断能力が不十分な方々の権利や財産を守るための制度ですので、認知症の場合に限られません。
例えば、知的障害により判断能力が十分でない場合や、交通事故などによって脳に障害を負い植物状態になってしまった場合などでも、利用することができます。

成年後見制度の種類

成年後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、次に3つの類型に分かれます。
1)後見  本人の判断能力が全くない又はほぼない場合
2)保佐  本人の判断能力が著しく不十分な場合
3)補助  本人の判断能力が不十分な場合

成年後見制度の活用例

成年後見制度の活用が必要となるケースは様々ですが、良くある例をご紹介したいと思います。

1.本人の不動産を処分したい場合

まず、本人が所有する不動産を処分したいというケースがあります。

本人の判断能力が不十分であるなど、単身で生活することが困難な場合、施設に入所して介護や身の回りの世話をしてもらうケースが少なくありません。
そのようなケースで本人が自宅不動産を所有している場合には、自宅不動産には誰も居住していないにもかかわらず、固定資産税やマンション管理費などの維持費がかかってしまうことがあります。
本人は既に単身での生活が困難であるため、施設を出て自宅不動産に戻る予定はない、子どもたちも、自ら新居を構えており、親(本人)の自宅不動産に居住する予定はない、このため、維持費がかかるくらいであれば空き家の自宅不動産を処分したいというご相談が良くあります。

しかし、本人の判断能力の程度によっては、本人が売主となって不動産の売却をすることができません。
そのような場合には、家庭裁判所に後見人などを選任してもらい、その後見人などの援助を得て不動産の売却を行わなければなりません。
なお、上記の例のように、居住用不動産を売却する場合には、さらに家庭裁判所の許可も必要となります。

2.本人の財産を親族の一人が私的に流用する場合

次に、本人の判断能力が不十分であることに乗じて、親族の一人が本人の財産を私的に流用しているケースがあります。

例えば、本人の身の回りの世話などを行っている親族が本人の預金を払い戻し、それを自分自身のために使っているケースなどがあります。
本人名義の不動産が勝手に贈与され、本人の所有から親族の所有に変更されるというケースさえあります。
後々に事実が発覚した場合、本人の財産を流用していた親族は「本人から贈与を受けた」「本人に無断で預金を払い戻したわけではない」などと主張することが多いですが、肝心の本人の判断能力が十分でないこともあり、真相を明らかにするのが難しいこともあります。

ただ、このような場合、既に流用されてしまった財産を取り戻すことも重要ではありますが、その時点で残っている本人の財産がこれ以上減少しないようにすることも重要です。
そこで、本人の財産を守るために、家庭裁判所を通じて後見人などを選任してもらい、後見人などが本人の財産を代わりに管理することが必要となります。

3.遺産分割協議が必要な場合

お亡くなりになった方の遺産分割協議を行いたいが、相続人の一人の判断能力が不十分であり、遺産分割協議を行うことができないというケースもあります。

不動産の売買と同様に、本人の判断能力によっては、その本人が相続人の一人となって遺産分割協議を行うことはできません。
そのような場合には、家庭裁判所に後見人などを選任してもらい、その後見人などの援助を得て遺産分割協議を行わなければなりません。

成年後見制度の注意点

ただ、以上のような成年後見制度には注意しなければならない点もあります。

1.本人の財産を維持管理するのが原則

成年後見制度は、本人の財産を適切に維持管理するための制度であり、本人の財産を投機的に運用したり、後見人自身のために使用したりすることは、原則として認められません。
例えば、本人が死亡した場合に備えて、相続税の対策を講じておきたいと考えたとしても、必ずしもその対策を講じることができるとは限りません。

2.後見人などは家庭裁判所に対する報告などをしなければならない義務がある

後見人などは、家庭裁判所や後見監督人の指示に従って、本人の財産状況を報告しなければなりません。
仮に後見人が本人の財産を不適切に管理していた場合には、後見人を解任されるのみならず、損害賠償請求などの民事責任や業務上横領などの刑事責任を問われることもあります。

3.本人が死亡するか、判断能力が回復するまで後見人などの職務は終了しない

後見人などの職務は、本人が死亡するか、あるいは、本人の判断能力が回復するまでは終了しません。
不動産の売却や遺産分割協議のために後見人を選任した場合であっても、不動産の売却や遺産分割協議が終了したからと言って後見人の職務は終了せず、本人が死亡するか、本人の判断能力が回復するまで、本人の財産を適切に維持管理しなければなりません。

4.希望者が後見人に選任されるとは限らない

後見人などは家庭裁判所が選任し、希望する親族が後見人などに選任されるとは限りません。
本人の財産状況や親族間の紛争状況などによっては、中立な立場の弁護士や司法書士などの専門職が選任されることもあります。
しかも、専門職が後見人などに選任された場合には、本人の財産からその報酬を支払わなければなりません。

任意後見制度・家族信託

これまで述べてきた成年後見制度(法定後見制度)は、既に本人の判断能力が不十分となっている場合に本人の権利や財産を守るための法律上の制度です。
これに対して、本人の判断能力が不十分となる前であれば、将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、誰にどのような援助をしてもらうかを契約によって決めておくことも可能です(任意後見制度)。
また、本人が財産を親族などに託す家族信託という制度もあります(家族信託についてはこちらをご覧ください)。
いずれも判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分となった場合に備える制度であり、法定後見制度よりも柔軟であるとともに制約が少ないという利点があります。
家族信託について

判断能力があるうちに対策を

当然のことではありますが、遺言の作成や相続税対策などは、死亡してから行うことはできず、あくまで生前に対策を講じなければなりません。
しかし、生前であればいつでも対策ができるというわけでもなく、判断能力が不十分になってしまうと、法定後見制度に伴う様々な制約を受けることになります。
したがって、対策を講じるのであれば、判断能力があるうちに行わなければなりません。

冒頭で述べましたとおり、現在、認知症患者の割合が増えてきており、決して他人事ではなくなってきております。
誰しも、将来、自分自身の判断能力が不十分となることなど想像できないでしょうし、ましてや自分自身が死ぬことなど想像したくもありません。
もっとも、判断能力が不十分となってからでは相続対策を講じることができず、手遅れになってしまうこともあります。
元気なうちであれば、相続対策の選択肢の幅が広がることもあります。
「自分はまだ大丈夫」ではなく、ご家族のためにも、お早めにご相談頂ければと思います。

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