遺産分割- 円満に遺産を分けるために -

遺産分割を巡る紛争はどこの家庭でも生じうる

最高裁判所の司法統計によりますと、近年、遺産分割事件(調停事件・審判事件)の件数は増えており、平成24年以降は毎年約1万5000件にも上る紛争が家庭裁判所に寄せられています。
遺産分割を巡る紛争には家庭裁判所の調停手続や審判手続によらないものも多数存在することを考えますと、多くの家庭で遺産分割を巡る紛争が発生していることが窺えます。

しかも、紛争が発生するのは、必ずしも遺産が多い場合に限られません。
最高裁判所の司法統計では、遺産価額が5000万円以下のケースが遺産分割事件の大部分を占めるとされています。

誰しも、親族との間で紛争を起こしたくはありませんし、亡くなった故人も残された遺族間で紛争が生じることは望まないと思います。
しかし、ちょっとした気持ちのすれ違いなどをきっかけとして、多くの紛争が発生しているのも事実です。

既に紛争が発生している場合、紛争が発生するかもしれない場合には、お気軽にご相談下さい。
なお、残された遺族に紛争が起こらないように、生前に対策を行うことも可能です。生前対策についてはこちらをご覧ください。

遺産分割を巡る紛争事例

遺産分割を巡る紛争の内容は、家庭によって様々ですが、良くある例をご紹介したいと思います。
もしどれかに当てはまる場合には、お気軽にご相談ください。

1.遺産の範囲を巡る紛争

故人(被相続人)と同居していた相続人がいる場合、その同居相続人が被相続人の財産を管理していることが通常です。
被相続人の死後、同居相続人が被相続人の財産を全て開示した上で、他の相続人と遺産分割協議を行うのが通常ですが、同居相続人が充分に財産を開示しないことがあります。

反対に、同居相続人が全ての財産を開示したとしても、他の相続人から「他にも財産があったはず」と疑いをかけられることもあります。

このような場合には、被相続人名義の預金の取引履歴の調査など、相続財産の調査を行わなければなりません。
被相続人の遺産の範囲に紛争が生じる場合には、遺産分割協議の前提となる遺産の範囲が確定しないため、遺産分割協議を進めることができず、その結果、大きな紛争に発展することがあります。

2.使途不明金がある場合

被相続人の死後、存在したはずの相続財産がなくなっていることが判明し、しかも、その使途が不明であるということがあります。

例えば、被相続人の死亡直前に預金口座から多額の預金が払い戻されているが、その預金が何に使われたのか不明なケース、被相続人の死亡直前に不動産などの財産が処分されているが、その代金が何に使われたのか不明なケースなどがあります。
このような使途不明金について、被相続人の財産を管理していた同居相続人が私的に流用していたのであれば、遺産の先取りとして、遺産分割の際に調整しなければなりません。

ただ、使途不明金については、その存在を明らかにすること自体が難しいことも多く、場合によっては訴訟にまで発展することもあります。
また、使途不明金の存在が明らかになったとしても、同居相続人が「被相続人から贈与を受けたものだ」と主張することもあり、そのような場合には特別受益や持戻し免除という複雑な問題にまで発展します。
反対に、被相続人の財産を管理していた同居相続人としては、適切に財産管理をしていたにもかかわらず、他の相続人から私的流用を疑われることもあります。

以上のような使途不明金は、遺産分割に付随する問題ではありますが、遺産分割協議が紛糾するきっかけとなることが多くあります。

3.不動産など分けられない財産がある場合

預金などの金銭については、分割することが可能です(例えば600万円の預金を3人で分ける場合には、200万円ずつ分けることが可能です)。
しかし、遺産の中には、不動産など性質上分けられない財産も存在します。

このような場合、その不動産を相続人全員で共有するという選択肢(共有分割)もありますが、共有にしてしまうと、相続人の一人がその不動産に居住する場合、他の共有者に対して賃料を支払わなければならないという問題も生じ得ます。
このため、不動産の取得を希望する相続人がいる場合には、その相続人が不動産を取得し、他の相続人は預金などの他の財産を取得するという分割方法(現物分割)をとるのが通常です。

もっとも、被相続人の遺産の内容によっては、このような現物分割が難しいことが少なくありません。
例えば、相続人としてAさん・Bさん・Cさんの3人がおり、遺産として不動産(評価額1000万円)と預金500万円があるというケースを例にします。

Aさんは、被相続人が亡くなるまで、不動産で被相続人と同居していました。
このため、Aさんとしては、今後も引き続き居住するため、不動産を取得したいという希望を持っているとします。
Aさんが1000万円相当の不動産を取得した場合、Bさん・Cさんは、残りの財産である預金500万円を250万円ずつ分けることになりますが、これでは、Aさんとの間で明らかな不均衡が生じてしまいます。
評価額を基準とすれば、合計1500万円相当の遺産があり、均等に分けた場合にはそれぞれ500万円ずつ取得することが可能であるにもかかわらず、Bさん・Cさんは250万円しか取得することができません。

このような現物分割が不可能な場合(現物分割では不均衡が生じてしまう場合)には、「代償分割」という方法がとられます。

すなわち、Aさんが1000万円相当の不動産を取得することの代償として、Bさん・Cさんにそれぞれ250万円ずつの代償金を支払うという方法です。
AさんがBさん・Cさんに代償金を支払うことにより、現物分割の不均衡を調整することが可能になります。

● Aさん:1000万円相当の不動産-代償金合計500万円=500万円
● Bさん:預金250万円+Aさんからの代償金250万円=500万円
● Cさん:預金250万円+Aさんからの代償金250万円=500万円

しかし、Aさんの財産状況によっては、Bさん・Cさんに支払う代償金500万円を用意することができないこともあります。特に不動産の評価額が高額であればあるほど、Bさん・Cさんに支払わなければならない代償金の金額が高額となりますので、その捻出が難しくなります。
現物分割ではBさん・Cさんが納得せず、代償分割もAさんが代償金を用意できないといった場合には、「換価分割」という方法をとらなければなりません。
すなわち、不動産を売却するなどして金銭に換価した上で、その金銭を相続人間で分けます。
換価分割の場合、不動産を売却することになるため、Aさんは引き続き不動産に居住することができません。

以上のとおり、不動産などの性質上分けられない財産がある場合には、分割方法を巡る紛争になることが少なくありません。また、不動産の評価額について、相続人間で意見が対立することもあります。

以上のような分割方法を巡る紛争は、被相続人の相続財産の状況によって非常に難しい問題となることもありますが、生前に一定の対策を講じることも可能ですので、お気軽にご相談下さい。

4.被相続人を介護していた相続人がいる場合

近年、高齢化に伴い、子どもの一人が親と同居して介護を行うケースが多いように思います。
介護は、身体的にも精神的にも大きな負担を伴うことがあります。

このため、介護をしていた相続人としては、「遺産分割協議では他の相続人よりも多く配分を受けたい」「何も介護に協力しなかった他の相続人と均等に遺産を分けることはおかしい」と考えることが少なくありません。
しかし、このような場合、法律上当然に、介護をしていた相続人が他の相続人よりも多く遺産を受けられるかというとそうではありません。

療養看護によって故人の財産の維持や増加に特別の寄与をしたと言える場合には、他の相続人よりも多く遺産を受けられることもありますが(寄与分)、介護していたからと言って当然に多く遺産を取得できるわけではありません。
このような場合、寄与分を巡って紛争となることがあり、介護をしていた相続人の苦労が感情的なもつれとなって、さらに紛争が発展することもあります。

また、前記2のように、他の相続人から介護をしていた相続人に対して使途不明金の疑いがかけられ、紛争が過熱化することもあります。

5.事業承継を伴う場合

被相続人が個人事業や会社を経営していた場合も、複雑な問題に発展することがあります。
個人事業の場合には事業用資産が遺産に含まれ、会社経営の場合には株式や持分が遺産に含まれます。

相続人の中に後継者がいる場合、後継者としては事業用資産や株式を取得したいという希望を持ちますが、前記3の不動産と同じような問題が生じることが少なくありません。

すなわち、後継者である特定の相続人が事業用資産や株式を取得する場合、相続財産の状況によっては不均衡が生じてしまいます。
そこで、後継者としては、代償分割のための代償金を用意することになりますが、事業用資産や株式の評価額が高額である場合には、後継者が代償金を用意することができず、分割方法を巡って大きな紛争となることがあります。
また、後継者としては、被相続人の事業の発展に貢献したという思いがあることが少なくなく、前記4の介護の例のように寄与分の問題が生じることもあります。
後継者候補が複数いる場合には、後継者問題が伴うこともあります。

6.笑う相続人がいる場合

被相続人に離婚歴がある場合、被相続人と元配偶者の間で生まれた子どもも相続人になります。

元配偶者との間で生まれた子どもは、離婚により被相続人との関係が薄くなっていることが少なくなく、場合によっては、全く交流がないこともあります。
しかし、仮に被相続人との交流がなかったとしても、法律上は子どもであることに変わりはない以上、相続人にあたります。

同様に、被相続人に子どもがいない場合も、関係が薄い相続人や縁遠い相続人が発生することがあります。
子どもがいない場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人になりますが、兄弟姉妹が既に他界している場合には、その兄弟姉妹の子ども(甥や姪)が相続人になります。
甥や姪は、被相続人との交流や関係が薄いことが少なくありませんが、仮に生前全く交流がなかったとしても相続人にあたります。

このように、被相続人との関係が薄かったり交流が全くなかったりしても相続人にあたることがありますので、場合によっては、被相続人の死亡に悲しみを感じることさえない者が莫大な遺産を取得するというケースもあります。

このような相続人については、言わば棚からぼた餅のように遺産を取得することになりますので、「笑う相続人」と呼ばれることもあります。
笑う相続人が発生する場合、被相続人との縁故や他の相続人との関係が薄いこともあり、遺産分割協議が円滑に進まず、紛争に発展することが数多くあります。

まずはご相談を

遺産分割を巡る紛争事例をいくつかご紹介しましたが、紛争が生じるのはここに記載したものに限られません。
元々の親族関係は良好であったにもかかわらず、遺産を巡る紛争が生じることは少なくありません。
実際に紛争になってしまった方からは「うちは大丈夫だと思っていたのに」というお話も耳にします。

誰しも、親族間で紛争などは起こしたくありません。
しかし、冒頭で述べましたとおり、現実には、遺産を巡る紛争が数多く発生しています。
中には、もはや親族間の話し合いのみでは解決することができないほどに事態が発展してしまっていることもあります。

遺産分割を巡る紛争でお困りの方、紛争に発展するかもしれないと不安を感じている方は、まずはお気軽にご相談頂ければと思います。
また、未だ相続が発生していない方も、生前にあらかじめ対策をしておけば、紛争を一定程度予防することが可能です。
特に上記の事例に当てはまりそうな方は、お早めにご相談頂ければと思います。

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