評価の基準は相続開始日が原則
ビットコイン価格がついに200万円を突破しました。5月の20万円台となった段階で近々暴落するのでは、と私は予想していましたが、見事にはずれました。半年間で10倍での上昇。私の頭では理解できないスピードの上昇ぶりです。
今回はビットコインのような時価の変動が激しい相続財産について、課税価格を評価する日付である基準日と納付時期とのズレにより生じる最悪のケースについて考えていきたいと思います。
(ビットコインは相続税の評価方法が明確化されていないため、以下ではビットコインも死亡日の時価で評価されることを仮定とします。)
相続財産の評価
相続財産は原則として相続開始日(被相続人の死亡した日)の時価で算出されます。「原則」とされているのは、「例外」として上場株式等の取扱いがあるためですが、「原則」はあくまでも相続開始日が基準となり、どちらの取扱いも相続開始日以前を基準としており、納税期限(相続開始日から10月)の時価は全く関係ありません。(ちなみに、上場株式は、①被相続人が死亡した日の終値、②被相続人が死亡した月の終値の月平均額、③被相続人が死亡した前月の終値の月平均額、④被相続人に死亡した前々月の終値の月平均額、のいずれか低い額となります。)
想定される悲劇
納税時期まで10月あるにも関わらず、あくまでも相続開始日(又は相続開始以前)の時価を基準に相続税額が算出されるのは、非常に恐ろしい結果となる場合があり、やり方を誤ると致命的になります。例えば冒頭で述べたビットコインの場合はわずか7ヶ月でその価格が6.5倍となっていますが、急上昇しているということは急降下する可能性も同様にあると考えるべきであり、以下のケースが考えられます。
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●相続開始日の相続財産の課税価格:3億円(すべてビットコイン)
●その他の条件:ビットコイン価格が8ヶ月で1/10(3000万円)に下落し、慌てて3000万円で売却した
この場合、相続税額は法定相続人が1人で約8800万円となり、売却したビットコインは3000万円であるため、差額5800万円は自己保有の財産から納税しなければならなくなります。もし相続人が納付できない場合、納付するまでの日数に応じた延滞税が発生し、督促状がきても納付しないときは財産の差押え等の滞納処分を受けることとなってしまいます。
東日本大震災後の東電株などを考えると、これは価格の不安定な暗号通貨特有の問題というわけではなく、相続税の申告が必要な方なら誰にでも起こりうる問題です。では、どうすればよかったのか。改善点は色々ありますが、以下2点が基本的内容となります。
① 相続開始後はなるべく早めに相続財産を決定し、納税する
ビットコインはわかりませんが、上場株式等は相続手続きだけで1~2ヶ月程度かかります。もちろん、その期間でも保有している株価は日々変化します。本当に基本となってしまいますが、相続税の納税に相続財産の株式を当てにしている場合は早め早めの納税を心がけましょう。
② 時価が下落した相続財産を売却せずに物納する
こちらは最終手段です。相続税の納付方法の1つとして物納という方法があります。相続税を金銭で納付することが困難といった場合に、土地や株式などの現物を差し出すことで相続税を納付する方法です。(但し、ビットコインが物納財産として認められるかどうかは現状では不明確です。)この物納財産の価額ですが、実は納付時の時価ではなく、相続税評価額で評価がされるため、時価が下落した相続財産でも相続開始時の価額で引き取ってもらうことができるのです。ただし、物納の許可を得るためには一定の条件があり、かつ期限までに一定の書類を提出することが必要なため注意が必要です。物納が許可されない場合に致命的なので、①の方法を心がけましょう。
相続税の納付額は一般的に多額となるため、生前に税理士と相談しながら対策を考えていくことが理想です。その上で、実際に相続が発生した場合は早め早めに財産評価・納税額の算出まで計算を済ませ、できるだけゆとりを持って納税することが必要だと思います。何かお困りの際は、資産の売却等の前に是非相続を得意とする税理士にお問い合わせ下さい。
執筆者:関口達也