遺言書があった場合の相続手続き
遺言(いごん)とは、亡くなられた方(被相続人)が生前に、自身の財産についてどのように相続させるかを意思表示しておくことです。財産だけではなく付言として思いを残すことも出来ます。
今回は、主に自筆証書遺言と公正証書遺言の手続きについて説明します。
自筆証書遺言
亡くなられた後に、自筆証書遺言が発見されたとしても、悪意を持った相続人が処分してしまったり、書き加えてしまったりする可能性があります。
そのため、証拠保全として自筆証書遺言が存在していることや、内容を相続人へ伝える必要があります。
この手続きを検認と言います。
検認は家庭裁判所で行います。
検認をするには、だれが相続人であるかを戸籍で確認し、相続人の住所を把握する必要があります。
家庭裁判所で検認を進めると、家庭裁判所から相続人へ「〇月〇日に被相続人の遺言を開封しますので来られる方は来てください」と手紙にて連絡が入ります。
その後、開封し内容の確認を行うこととなります。
なお、この検認は遺言があったことを証明することにはなりますが、遺言の内容を保証するものではありません。
また、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は検認の手続は不要です。
次に遺言執行者が決められているかを確認します。
遺言執行者とは、遺言のとおりに手続きを進めていく人を指します。
遺言執行者がいないと相続手続きができない場合が多いため、遺言執行者が決められていない場合は、改めて家庭裁判所で遺言執行者の選任をしてもらう必要があります。
なお、遺言執行者に選任された人は、相続人へ遺言内容や相続財産目録を開示する義務が生じます。
検認から遺言執行者の選任までは、概ね4カ月以上かかる場合があります。
自筆証書遺言の手続きは、専門家ではない被相続人が自身で作成していることが多いため、記載の仕方等によってスムーズに相続手続きが出来ないことがあります。
なお、手続きの可否判断は、不動産の場合は法務局、有価証券や預貯金であれば各金融機関が行います。
自筆証書遺言は手軽に作成が可能ですが、相続手続きで使用する際は注意が必要です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人という役人が作成した遺言書です。
作成には費用が掛かりますが、作成した遺言書は死亡後50年、作成後140年または遺言者の生後170年間は保存してもらえます。
また、遺言書を紛失した場合は再発行が出来たり、相続人であれば被相続人の残した遺言を請求することが出来ます。
公正証書遺言の手続きは、自筆証書遺言と異なり、検認の手続きは必要ありません。
また、遺言執行者も決められていることが多く、スムーズに相続手続きをすることが出来ます。
遺言での相続手続きについて
一般的に金融機関で相続手続きをする際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の現在の戸籍が必要になりますが、遺言の場合は、被相続人が亡くなったことが証明される戸籍や遺言により相続や遺贈を受ける人の証明書(印鑑登録証明書、住民票等)を用意すると相続手続きが可能な場合が多いです。
自筆証書遺言と公正証書遺言の手続きについて簡単に記載してみましたが、ご自身で行うのには限度があります。お困りの際にはお気軽にご相談いただければと思います。