相続登記の申請義務化について
今回は相続登記の申請義務化について記載します(記載されている情報は令和5年6月現在のものです)。
1.相続登記の申請義務化とは?
これまで、相続で不動産を取得した場合、相続登記の申請には期限はなく、また申請をせずにそのままにしていても罰則等はありませんでした。
しかし、令和6年4月1日よりこの申請が義務化されることになりました。
これにより、不動産の取得を知った日から、正当な理由なく3年間そのままにしておくと、10万円以下の過料が科せられることがあります。
また、今回の義務化以前に相続した不動産も対象となりますので、注意が必要です。
なお、この場合は令和9年3月31日までに相続登記の申請をする必要があります。
2.相続登記の申請義務化の背景
現在、日本には所有者不明の土地が多く存在します。
その面積は九州本島の面積に匹敵するとまで言われています。
この所有者不明の土地より、災害復興の工事やインフラの整備、都市開発等が進められず、深刻な問題となっています。
このような問題の解決策の一つとして、今回、相続登記の申請が義務化となりました。
同じ所有者不明土地の発生予防策として、相続土地国庫帰属制度も施行されました。
相続土地国庫帰属制度については、別の記事にも記載していますのでご確認ください。
3.相続登記の申請義務化の例外
相続登記の申請義務化には例外もあり、以下のような場合は、正当な理由として認められることもあります。
なお、法務局では個別に事情を確認して対応されますので、何かご不安なことがある場合は、相談されるといいでしょう。
(1)数次相続等により相続人が極めて多くなり、戸籍収集や相続人の確定に時間を要する
(2)遺言の有効性等が争われている
(3)申請者が重い病気にかかっている、経済的に困窮している 等々
4.相続登記の申請義務化に伴う新しい制度「相続人申告登記」
相続人申告登記とは、申請義務のある者が、相続が開始したことや自分が相続人であることを申出し、氏名や住所等を登記するものです。
この相続人申告登記をすると、相続登記の申請義務を履行したものとして認められます。
また、通常の相続登記の申請とは違い、不動産の持分まで決める必要がないので、遺産分割協議がまとまらず、相続登記の申請が出来ないといった場合でも、この相続人申告登記をすれば義務を履行したこととなります。
最後に
これまで所有者が亡くなった後、不動産の登記申請(名義変更)をせず、そのままにしている方も多くいらっしゃると思います。
私達も相続手続きのお手伝いをしていると、名義変更をしないうちに、所有者の相続人も亡くなってしまい、相続関係がさらに複雑になってしまったというケースに度々出会います。
このようにならないためにも、相続が発生したら、速やかに名義変更されることをおすすめします。
なお、今後は住所等の変更登記の申請についても義務化が予定されており、所有者不明土地問題の解決が急がれています。
札幌相続センターでは相続手続きの代行をしております。相続手続きはご自身で行うことも出来ますが、お困りの際はお問合せください。
法務省,2021.4.28,「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」,
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html,参照2023.6.23)