はじめに
前回、「遺言書がある場合の遺産分割」についてお話ししました。
今回は遺言書がなかった場合や、見つかった遺言書と違う内容で分割したい場合に必要となる「遺産分割協議」についてまとめました。
遺産分割協議とは?
相続の開始後、遺産総額を把握できたら相続人全員でそれをどのように分割するかを話し合います。それを「遺産分割協議」といいます。
そこで取り決めた内容を「遺産分割協議書」という書面で残し、相続人全員の署名と捺印したものを各相続人が1部ずつ保管します。
話し合いがまとまらないことも?
相続人が複数いて利害が相反する場合や、財産の種類が現預金だけでなく不動産や株式など多岐にわたっていた場合、誰が何をどのくらい相続するかすんなりと決まらないケースもあります。「不動産は要らないからその分現金が欲しい」という意見や、「自分は亡くなる時まで面倒をみたのだからその分を考慮してほしい」など相続人間で思いがぶつかり、揉めることもあるのです。
そこでお互いが歩み寄って折り合いをつけられれば良いのですが、どうしても話し合いがまとまらないときは家庭裁判所に解決を依頼することになります。
遺産分割調停
遺産分割協議がどうしてもまとまらなかった場合、相続人が家庭裁判所に他の相続人を相手とする「遺産分割調停申立書」を提出し「遺産分割調停」が始まります。
申立てを受理した家庭裁判所はおよそ1ヶ月に1回のペースで申立てをした相続人と相手方の相続人を交互に呼び出し、2名の調停委員が間に入って解決案を模索していきます。
その調停は双方で折り合いがつくまで続き、調停が成立すると家庭裁判所で「調停調書」が作成され、それに基づいて遺産分割が行われることになります。
調停が不調に終わったら?
調停でも解決できなかった場合は「遺産分割審判」という手続きに自動的に移行することになります。
審判では調停とは違い、訴訟のように審判官のもとに相続人が顔を合わせる形で出廷して、それぞれの証拠書類を提示しながら自らの主張をします。
この審判の途中で和解できた場合はその時点で調書が作成されて審判は終了し、和解内容にて遺産分割が行われます。
しかし和解に至ることができなかった場合、双方の主張や証拠が出尽くされるまで審判は続きます。その後、審判官が双方の意見を聞き取った上で妥当とみなされる範囲内で分割方法を決定します。つまり、審判官に言い渡された内容に従って遺産分割が行われるのです。
さいごに
身近な大切な方を亡くして同じ悲しみを味わったはずの人たちが、遺産相続を巡って争うことでまた別の悲しみを生んでしまいます。一度揉めてしまうとその後の人間関係にも影響を及ぼしますので、できることならば冷静な話し合いで解決できるようにしたいものです。